HOME > 3分経営講座 経営改善塾 > 「経営者のための報酬課税問題」 その1
従業員の給与は、最低賃金等の制約あるものの、いくら払おうが、儲かったらボーナスをいくら払おうが、給与に係る税金さえ払えば、法人税の計算上は支払った分だけ控除されることになり、上限等の制約はない。
ところが、役員報酬にはいろいろな制約がある。
1つは、各事業年度内定期同額でなければならず、儲かったからと言って期中に増額したり、賞与を払ったりすると、その増額部分や賞与が法人税の課税対象になる(法人税法第34条第1項①)。個人の所得税と法人税との両方で課税されることになる。
2つめは、不相当に高額な部分の役員報酬は法人税の課税対象となる。(法人税法第34条第2項)
何が不相当にあたるかというと、その役員の職務内容、その法人の収益及び使用人に対する給与の支給状況、同種の事業を営み事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給状況等に照らして判断すると政令で定められています。
「残波」酒造会社が、役員4人に支給した報酬計19億4千万円(4年分の役員報酬12億7千万円と、退職慰労金6億7千万円)のうち6億円について、沖縄国税事務所に不相当に高額と指摘を受け課税された事件がありました。
沖縄国税事務所の主張の概要は以下の通り。
売上が同社の0.5~2倍の酒造会社約30社(沖縄県と熊本国税局管内)を抽出して役員報酬を比較したところ、平均額の4~9倍であること。売上がピーク時より減少し、従業員給与は増えていないのに役員報酬は上昇しているなど。
平成25年当時、従業員は約25人で、売上高は約22億円程度であったようだ。
先ほどの政令に照らせば、「不相当に高額」と指摘を受けてもやむをえないと思われる。しかしながら、東京地裁はこの課税処分を取り消す判断を下した。(H28.4.22)
なぜ、「残波」酒造会社の主張が認められたのか、次回以降その課税の実態に迫っていきたい。
- 役員報酬は定期同額支給が原則。期中での増額には注意しよう。
- 不相当に高額な部分の役員報酬は法人税の課税対象に。