HOME > 3分経営講座 経営改善塾 > 相続にかかる遺産分割手続きと相続税 その32
認知症や高齢化に伴う意思能力低下などによって、預金が引き出せなくリスクが生じてくる。原則として本人でなければ預金等を引き出したり、有価証券の売買を行うことができず、認知症患者ということが知れると、たとえ親族が代理又は同行してきても、容易には取引に応じられないというのが銀行や証券会社の立場。入金はできても、出金ができない、あるいは株の売却に応じてくれないといった問題が生ずることになります。
日経新聞によると、高齢化の進展で認知症患者が保有する金融資産が2030年には215兆円にも達して、家計金融資産全体の1割を突破しそうとの試算もあります。
厚生労働省の調べによると、65歳以上の認知症又はその疑いがある割合は28%にも上るそうです。
認知症の疑いや高齢化に伴う意思能力低下などによって、預金が引き出しできない、有価証券の処分ができない、不動産の購入など契約行為もできないとなると、相続税対策は一層難しくなるでしょう。認知症患者となった親から子へ、相続税対策と思って贈与したつもりの資金が、贈与と認められず相続税が課税される可能性も考えられます。
また、賃貸不動産が老朽化、空室増加、あるいは地価の下落など、家族が不動産を売りたいと考えても、本人が認知症患者では、売るに売れないといったように、資産の組み換えが困難になってしまいます。
親が急に倒れるようなことがあっても、親族が代わりに銀行や証券会社にいって事情を話して預金を引き出してくれたり、あうんの呼吸で株式を売却してくれたりといった時代はとうの昔話になりつつあるようです。コンプライアンスが叫ばれる昨今、不測の事態に備えて相続対策としてやるべき手立てはあるのでしょうか。
次回は、後見人制度、家族信託について解説していきます。
- 高齢化に伴い認知症患者は増加の一途。資産の凍結が深刻に。
- 認知症患者等意思能力ないと認められると、預金引き出しや資産の組み換えはほぼ困難に。
- 認知症等になる前に、将来の相続に向けて打つべき手とは?