HOME > 3分経営講座 経営改善塾 > 相続にかかる遺産分割手続きと相続税 その11
借地は、自分の所有する土地でありませんが、土地の価格×借地権割合 によって、借地権の金額が相続税の対象となり、逆に貸している土地であれば、土地の価格×(1-借地権割合) により求めることができます。借地権割合は30%~90%と地域により異なりますが、70%前後が多いようです。
自分の土地にアパートなど賃貸不動産を建てている場合には、土地の評価額は、土地の価格×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)によってもとめます。借家権は30%、借地権割合を70%と仮定し全て賃貸中(満室)の場合には、(1-70%×30%×100%)=79%となり、更地評価より21%減少することになります。
少子高齢化などを背景に、空き家は750万戸余りと年々増加の一途をたどっている一方で、貸家着工戸数もここ数年来堅調に伸ばしている。(平成28年度貸家着工戸数42万戸・前年比11%増)
単身世帯が増えているなどの要因もあるが、相続税改正による節税対策としてアパートなどの建築需要が高まっているようです。
1億円で土地(5000万円)と木造アパート(5000万円)を取得したとすると、想定される相続税評価額は、土地5000万円×約8割(路線価による評価)×(1-70%×30%貸家建てつけ値評価)≒3200万円に加え、アパート5000万円×約6割(固定資産税評価額)×(1-30%借家権)≒2100万円。あわせて5300万円①となり、現金で保有しているより4割以上の節税効果が期待できる。さらに、相続人がこの賃貸事業を引き継いで相続する場合、小規模宅地等の評価減として敷地分200㎡を上限に50%評価減を得られると、6割以上の節税効果が期待できることになる。
現金1億円を持っていなくても、頭金とあとは借入金があれば、このスキームが可能となる。
先ほどの例でみると、現金2000万円で残り借入金でまかなうとすると、相続税評価額は、土地建物5300万円-借入残高(8000万円として)=▲2700万円となり、自宅など他の財産と合わせて、基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば相続税はかからない。
財産を少しでも家族に残したいと思えばこそ、貸家建築需要が盛んになっている背景なのかもしれません。
但し、アパート経営は、誰にでもどこでもできるというものでは必ずしもなく、空室が増えると採算が合わず借入金が払いきれないということにもなり、老朽化による修繕費の負担も考えなくてはいけない。空き家が増加の一途をたどり、新築賃貸需要が増え続けている一方、少子高齢化・人口減少という中で、不動産投資は、建築・不動産業者だけでなく、第三者の意見もあわせて慎重に検討したい。
- 借地や賃貸不動産の評価方法を知ろう。
- 賃貸不動産の取得により相続税の節税効果が期待できそう。
- 賃貸経営の収支を事前に慎重に検討すること。空室リスク・修繕費負担等も考慮にいれよう。