HOME > 3分経営講座 経営改善塾 > 相続にかかる遺産分割手続きと相続税 その4
亡くなった時点で、遺産は遺言書がない限り、法定相続人の共有状態になります。
例えば亡くなった方の預金通帳を妻が預かっていたとして、葬式費用や生活費等のため妻が引き出したとしましょう。子や他の相続人がいる場合には、その引き出した預貯金を含めて亡くなった時点の残高をもとに協議することになります。そもそも、金融機関は、預貯金名義人が亡くなったことを知った時点で、預貯金口座を凍結します。金融機関に亡くなったことを知らせると預金は引き出すことができなくなるのです。
預金を引き出せないと葬式代も出せないという事態に陥るかもしれません。
また、電話代や公共料金の引き落とし口座となっている場合、凍結によって引き落としができず、生活に支障をきたしかねません。
金融機関にうっかり知らせるとこのようなことになるため注意が必要です。また金融機関によっては、配慮して口座凍結を止めてくれるところもあります。いずれにしても、一旦凍結された口座を解約又は名義変更しなければ使うことができません。解約又は名義変更するためには、法定相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、被相続人の除籍謄本及び原戸籍などとともに、遺産分割協議書又は金融機関指定書類に実印捺印などの手続きが必要です。メガバンクや郵便局では支店ではあくまで書類受付窓口で、相続センターなる部署で事務手続きが行われるため、全ての書類等が揃っていたとしても1週間から長くて1カ月程度要します。書類が不足していたり不備があるとさらに時間を要します。
大黒柱の夫が亡くなり、頼みの預金が引き出せないとなると何かと支障をきたすことになりますので、生前にある程度引き出しておくなどして万が一に備えることが肝要です。また亡くなった後、葬式費用や医療費等の支払い・公共料金引き落としなどに備えて、金融機関にはしばらく知らせない手段を取ることも必要かもしれません。
いっそ、生前に全額引き出してしまったらどうでしょう。亡くなった後何かと物入りに備えておきたいという点では有効な手立てかもしれません。
相続税についてはどうでしょう。預金残高ゼロとなったからといっても、相続時に残っていた現金は相続税の対象となります。子供の預金に入金させたとしても、単にお金が移動しただけで、被相続人の財産に変わりはないと税務上は考えます。
また遺産分割協議の上で、引き出した現金も当然に分割の対象になります
- 亡くなった方の預貯金は、一旦、法定相続人の共有状態となり口座凍結される。
- 一旦凍結された口座を解約又は名義変更しなければ使うことができない。
- 生前に引き出した現金も、その死亡時の残高が相続の対象となる。