HOME > 3分経営講座 経営改善塾 > 「経営者のための報酬課税問題」 その4
民間調査会社のデータによると、社長報酬の業界・規模によっては平均値が月額50万円を下回るケースもあり、仮に、その業種・規模からいって、50万円が不相当に高額とならない上限とってしまうとなれば、個人の所得税を払い、かつ法人税を支払わなければなりません。
また、役員報酬は事業年度内定期同額なので、原則として期初(遅くとも期初より3か月以内)には役員報酬額を決定していなければなりませんが、当初の計画未達となった場合、「売上がピーク時より減少し、従業員給与は増えていないのに役員報酬は上昇している」(「残波」酒造会社が課税されたときの当局の主張)と指摘されかねない事態となりうる。
前年対比、売上・利益とも倍増となり、次期役員報酬も相応に上げるなら、「収益の状況」に照らせば指摘受けにくい面はあるが、中小企業の役員報酬を上げる要素は今後の見通しによることの方が多いように思われます。過去の業績如何にかかわらず来期の有望な計画をもって役員報酬を見直したはいいが、結果が伴わず、かえって数年後の税務調査で指摘を受け否認される可能性は否定できません。
なぜ不相当に高額な役員報酬部分に対して法人税課税するかといえば、「法人によっては実際は賞与にあたるものを報酬の名目で役員に給付する傾向があるため、そのような隠れた利益処分に対処し、課税の更正を確保しようとするもの」と過去の東京高裁等の判例(H23.2.24)でも示されている。
「さらに、不相当に高額かどうかについては、政令で定められている通り、当該役員の職務の内容を前提にして、当該会社の収益や使用人に対する給料の支払状況と対比するほか、収益率等が類似すると考えられる同種の事業を営み類似の規模を有する法人を選定した上、これら類似法人において当該役員と職務内容が類似する役員に支給される報酬額に比準して判断すべきものとし、特定の法人の役員に支給された報酬の額が課税上その職務に対する対価として不相当に高額かどうか」を基準とすべきとしている。
なかなか厳しい判断がこれまで示されていました。
代理人弁護士によると、(朝日新聞デジタルより)「実際に働いた対価としての報酬なので全額認めるべきだ。国税庁が民間企業の給与に口をはさむべきではない」
「社長らは業界トップといえる経営能力の持ち主なのに、近隣の経営者とだけ比較するのは違法な課税処分だ。法人税率より所得税率の方が高いので、租税回避にはあたらない。組がみだりに役員報酬を抑えれば、勤労意欲を阻害し、中小企業の活力をそぐ」などと主張していました。
東京地裁では、納税者の主張が一部認められたのですが、次回判決の内容について解説します。
- 役員報酬は定期同額支給が原則で期初(遅くとも3か月以内)に決定すること。
- 税務当局は、役員の職務内容、会社の収益状況や使用人に対する給与の支給状況、類似法人の支給状況等を比準して判断。