HOME > 3分経営講座 経営改善塾 > 「経営者のための報酬課税問題」 その2
「残波」酒造会社が、役員4人に支給した報酬計19億4千万円(4年分の役員報酬12億7千万円と、退職慰労金6億7千万円)のうち6億円について、沖縄国税事務所に不相当に高額と指摘を受け課税された事件を、東京地裁は、の課税処分を取り消す判断を下しました。(H28.4.22)
同業種同規模の会社と比較した基本月額平均額が4~9倍と高く、売上がピーク時より減少し、従業員給与は増えていないのに役員報酬は上昇しているなど、不相当に高額な部分の役員報酬は法人税の課税対象となる(法人税法第34条第2項)として課税した課税庁の判断がなぜ覆されたのでしょうか。
①事業年度内定期同額の背景
旧商法では取締役の賞与は利益処分とされ、配当金と同様に、法人の費用にならないとされ、法人税においても損金とされず課税対象になっていたのです。
ところが、平成18年5月会社法施行により取締役の報酬・賞与等は職務執行の対価として位置づけられ、会計上も報酬と同様に賞与も費用として経理処理されるようになりました。
これをうけて、法人税においても各事業年度内定期同額に支給される報酬は損金として認められる(法人税法第34条第1項①)が、法人税法令外のものについては損金に算入しないと整備されている。
②不相当に高額
役員に給与額の決定が委ねられている同族会社等においては、利益調整による租税回避に利用されかねないなどといった背景があるようです。配当といった利益処分をせず役員報酬を高額にするなど「隠れた利益処分」に対処するといったことも過去判例で指摘されています。
上場企業で役員報酬1億円以上の対象者は開示されていますが、不相当に高額として指摘を受けた事例はほとんど聞いたことがありません。年俸10億円の某自動車メーカー役員が話題になりましたが、いまや100億円を超える役員も出現しています。当然個人に対して課税されており、日本での最高税率は所得税・住民税で最高55%。
さらに「不相当に高額」な部分が法人でもさらに課税されるとすれば、法人・個人あわせて90%台にものぼりかねません。(所得税55%+法人税等表面税率37%=92%)
また、法人に対する実効税率は31%台(H28年度)で、さらに今後20%台に引き下げるとしているのに対し、個人に対する税率は最高55%。つまり、役員報酬を高額にすればするほど税収は上がるのであり、役員報酬を高額にして利益調整による租税回避との考え方には必ずしもあてはまらないのではないでしょうか。(続く...)
- 不相当に高額であること、又は定期同額支給以外の役員報酬(賞与)は否認される可能性あり要注意。
- 役員報酬(賞与)否認されても個人で課税され、法人税でも課税される。